患者さんにとりましては、インプラントは失敗しないのか、本当にうまくいくのか、手術する歯科医師の腕は大丈夫なのか、など色々ご心配だと思います。ここでは、過去に日本あるいは世界で実際に失敗した治療の例をあげて、どのようにすれば失敗を防ぐことが出来るかご説明します。
しかし、これらの失敗例は事前にきちんと精密検査をして治療計画をたてることで、殆どの場合はトラブルを防ぐことが可能です。
インプラントを埋め込むのに必要なだけの骨量がなかったために、本番の手術で埋め込むことができなかったという失敗例があります。
ところが、その手の失敗は、事前のCT撮影による検査で骨の量や形を正確に把握してシミュレーションを行い、骨を増やす処置をしっかり行っていれば起こることはありません。
骨が足りないケースでは増骨の手術として、しっかりと骨が出来たのを確認してからインプラントを埋入します。
骨を増やすためにはGBR法という手術を行い、補填剤や、骨の細胞を集める膜を使用したり、色々な準備が必要です。その準備はCT画像を読影して決めるのですが、それが不得意な歯科医院の場合は手術は中断になり、失敗となります。
骨が柔らかすぎて、手術中に埋め込むことが出来なかったという失敗もあります。柔らかすぎると、インプラントを入れても骨の中でズボズボになってしまい、治療計画通りの深さや角度に埋め込めないのです。
この手の失敗を防ぐには、骨密度を上げる(圧縮する)ような手法を確実に取り、また、柔らかい骨でも結合しやすいインプラントを選択することも必要です。
しかし質の問題はレントゲンやCT撮影からではわかりづらい場合もあり、オペ開始後に初めて患者さんの実際の質がわかるケースにおいては、臨機応変な処置や対応を行う経験と技術が必要になります。
そういった事ができない、あるいは不得意な歯科医師ではやはり手術は中断となり、失敗してしまいます。
手術後に起きる失敗例としては、埋め込んだインプラント(人工歯根)が様々な理由で顎骨と結合しなかった、というものがあります。
顎の骨にドリルで穴を開ける時にドリルが発熱して、骨の温度が上がってしまうことがあります。骨の細胞は42℃で死んでしまい、ダメージを受けます。骨が破損してしまうとインプラントが固定されにくくなり、ぐらついたり、抜けてしまうこともあります。
そのため、骨が発熱しないように、しっかりと注水して冷やしながらオペをすることが大事です。
注水のやり方が不十分な場合は手術の失敗に繋がってしまいます。
ドリルによるオーバーヒートで骨が壊死した場合は、インプラントを一度撤去したあと、1〜2ヶ月してから再度埋入手術を行います。再手術を受けることになり、いわば治療のやり直しですので、患者さんの精神的、肉体的負担が増します。
抜歯してから手術までに非常に長い年月が経っている場合は、骨が吸収されて減ってしまいます。そのためインプラントを埋入する部分に、骨を増やす治療(GBR法、増骨法)が必要になります。そのやり方が適切でないと、結果的に骨ができず、インプラントと骨を結合させることが出来ません。特に高さを増やすための骨造成は難しく、熟練してない歯科医院では失敗のリスクが上がります。
骨が減るのを防ぐためには、@歯を失ってから長く放っておかない。Aいれば、ブリッジは骨が吸収されるのでインプラント治療を選ぶことが大切です。
喫煙者や糖尿病の方など持病がある方の場合、手術そのものは上手くいっても、結果的にインプラントが結合しない事があります。
喫煙者や糖尿病の方は、血流が悪いため、インプラントと骨がしっかり結合しない失敗のリスクがあります。喫煙や糖尿病の程度の判断を誤ってオペをしてしまうと、残念ながら失敗の確率が上がります。
インプラントが顎骨と結合するのにかかる期間は、一般的に上顎で2〜6ヶ月、下顎で2〜3ヶ月と言われています。(日本口腔インプラント学会による)
結合するまでに要する期間は、実際には骨の密度、量、手術の仕方、インプラントの種類、患者さんの健康状態などによってかなり変わります。
その期間を見誤って、まだ完全に結合していないのに上部構造(被せ物)を装着してしまうと、インプラントがグラグラになって、しっかりと骨と結合しなくなってしまう可能性が高まります。
手術を受けた患者さんは、周りの歯肉等に痛みや腫れが多少出ますが、殆どの方は通常は数日〜一週間程度で自然に治っていきます。しかし一週間以上も痛みや腫れが大きく、しびれがひかない場合には、歯科医院を受診しましょう。
痛みや腫れが長期間ひかない原因として一番考えられるのは、手術中〜手術後の細菌への感染による炎症です。手術中の感染を防ぐためには、徹底した衛生管理のもとで手術が行われているクリニックを選ぶことが大切です
その他の原因としては、インプラントが神経を圧迫しているということがあります。神経圧迫は治療計画通りの位置、深さ、角度にインプラントが埋め込まれていない場合に起こることがあります。しかし熟練した技術を持つ歯科医師による手術では、まず起こることはありません。
治療が終わってからのセルフケアや歯科医院でのメンテナンスの不足によって起こるのが、インプラント周囲炎(歯周病)です。
治療の前には、まず歯周病治療をしっかり行います。そうしないと埋入後に周囲炎になってしまい、長持ちさせられないからです。
インプラント周囲炎にかかると、初期の状態ではインプラントの周囲の歯肉にわずかに炎症が見られる程度ですが、そのまま症状が進むと歯ぐきに膿が溜まって口臭の原因になったり、さらに悪化すると周囲の組織が細菌によって破壊されて骨の吸収が起こってインプラントがグラグラしだして動揺が起こります。その結果、
最後にはインプラントが骨から外れて脱落するスクが高まります。
人工歯は虫歯にならないから、歯磨きを止めたり、少しくらいサボっても大丈夫と思われる方もおられますが、実は治療後は天然歯以上に歯周病には気をつけなければなりません。
インプラントがだめになって後悔しないために、周囲炎を防ぐためには、歯周病予防と同じようにメンテナンスをしっかり続けることが絶対に必要です。ご家庭でのセルフケアも丁寧に行い、お口の中から歯周病菌を減らすことが長もちに繋がり、同時に天然歯も健康な状態に保つことが出来ます。
インプラントについてのご質問・ご相談は無料初診カウンセリングでドクターが詳しくお答えいたします。お気軽にご予約ください。